自然周期体外受精勉強会

凍結

近年、体外受精―胚移植による多胎妊娠が増加し、出産を扱う医療機関では、ベットが満床になるなど問題になっています。現在、日本産科婦人科学会では、年齢による胚移植数に制限を加えて多胎妊娠の予防を促しています。

この凍結技術が確立されていない頃は、余った胚は破棄していました。現在では、技術が向上し凍結した胚でも妊娠率に大差がないと言われています。ここでは、凍結の必要性や凍結方法をご説明します。

凍結の必要性

1) 余剰胚の確保

上記でも述べたように、体外受精技術が向上し、体外受精―胚移植を行う医療機関が増えると伴に、希望する患者も増えてきました。患者様の子供が欲しいという希望と医療機関側の子供ができるようにという考えから、胚移植数を多くして妊娠率を確保してきたことも背景にあります。
しかし、排卵誘発の方法、子宮の状態を整える方法や、この「凍結」技術が向上し、たくさんの胚を移植しなくても以前と同様またはそれ以上の妊娠率をだせることから、多く採卵された卵子や受精卵が一度に必要なくなったことから一度凍結して、次回以降の治療に利用することができるようになりました。

2) 胚移植と子宮内膜の時間的なズレの解消

凍結をするもうひとつの理由として「子宮内膜と胚の時間的なポイントを一緒にする」ことです。体外培養液で育てた胚を子宮に戻したときの子宮内膜は、胚にとって必ずしも着床しやすい環境でないことが多くあります。それは、体内環境より、体外で育てた方が胚盤胞への到達が時間的に遅い傾向にあるためです。それだけ体外環境は胚にとって苛酷な状況かもしれません。
つまり胚が胚盤胞になり着床ポイントに達したときに、子宮内膜はすでに着床しやすいポイントを過ぎている可能性があり、このまま胚を戻すことは、ポイントがずれたまま移植をするということになります。これでは、よい胚に育てても妊娠できません。

3) 凍結融解胚移植のために

  • 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の重症化予防のため
  • 子宮内膜が薄い、または形状がよくない
  • ホルモン環境がわるい

このような場合も一度凍結し、整えてから移植を行います。

凍結方法

1) ガラス化保存法

胚を直接高濃度の凍結保護剤で処理しながら、急速に凍結する方法です。

(凍結)室温で脱水し、液体窒素の中に投入し、30分程度で凍結させます。
(融解)凍結保護剤の入った培養液の中に胚を入れ、急速に融解しだんだん凍結保護剤を薄めていきます。

※現在の凍結ではほとんどこちらの「ガラス化保存法」が行われています。

2) 緩慢凍結法

胚を凍結液に段階的に浸しストローに入れて緩やかに2時間かけて凍結させる方法です。
融解方法は、ぬるいお湯の中で融解して、だんだん凍結保存剤を薄めていきます。

〜ガラス化保存法のメリット・デメリット(緩慢凍結法と比べて)〜

メリット・・・
・胚の質を低下させることなく凍結保存が可能
・胚の融解後の生存率が高い

デメリット・・
・凍結保存剤の細胞毒性が高い
・高度なテクニックが必要である